人類とエイリアン

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人間は、つくづく生産性の悪い生き物だと思う。80年以上かけて蓄積した知識や、ノウハウも、その死とともに消えてしまう。新しい命も、裸で、まさに、初期化された状態で生まれてきて、数十年に及ぶ試行錯誤と学習等を経て、ようやく一人前になる。今は、30歳を過ぎたころが、ようやくスタートライン。しかし、それも、先人が積み上げた情報が増えていくにつれて、スタートラインに到達するのにかかる時間は伸びていく。このスタートラインに到達する時間が、寿命を超えるときが、人類的意味でのシンギュラリティとなるのではないか。いずれにしても人類は、こうした繰り返しをしながら、尺取り虫のように、少しずつ進化していくしかない生き物。

人間の身につけた情報は、セーブすることも、インストールすることもできまない。一人一人の人間が、時間をかけて、せっかく身につけた大切な情報も、使わないで放っておけば、記憶から消え去ってしまう。自分のDNAを分け与えた子供にすら、情報を正確に伝達することができない。こんな人間は、AIから見れば、ゾウリムシのような、増殖するだけの単細胞生物レベルかもしれない。種を維持するのが精一杯で、その進化など、たかが知れている。

人類が、有機物で構成される生物のままでは、おそらく、これ以上の発展は望めない。そう、人間の体は、あまりにも脆弱、その寿命も短すぎる。地球上での大航海時代ならば、まだしも、数十億光年というスケールの宇宙に出て行くには、この人間の体のままでは、何事もなし得ない。

もし仮に、人類の築き上げた、これまでの全ての情報を、データの形で保有、承継できれば、それが、人類に変わる知的生命体となるだろう。その生命体にとっては、もはや、脆弱な生物に過ぎない人類という種の保存など、どうでもよい。

SFでは、未だに、エイリアンは、生き物の形をとって、この地球に来る。しかし、それはあり得ない。仮に、数億光年の旅路を経て、この地球に到達できるエイリアンが存在したとしたら、それは情報の集合体だろう。クラウドのように、どこにあるのか、あるいはどこにいるのか、わからない存在。もしかすると、我々人類が、「存在」とは認識できないかもしれない。