紅白歌合戦

フレンチを食べに行ったらラーメンを出されたり、あるいは、カレーを食べに行ったら懐石料理を出されたりしたら、その店には二度と行きたくなくなるだろう。

今、紅白歌合戦は、そんなことになっているのではないか。

昔の日本人は、日々を生きるのに精一杯。音楽という趣味を本格的に嗜む人はあまりいなかった。だから、大晦日くらいは、音楽に全く関心のない家族も含めて、一家団欒で音楽を楽しむ年越しの儀式として紅白歌合戦は大きな意味を持っていた。家も狭く、一家にテレビ一台という時代。紅白歌合戦は圧倒的なコンテンツだった。

しかし、今は違う。音楽という趣味を持たない人までをターゲットにしようとする紅白歌合戦は、コンテンツとして成り立たない。そもそも、音楽という趣味を持つ人でも、好きなジャンルは多種多様だ。

誰もが中流で、生きるのに忙しく、趣味や娯楽にあまりこだわりがなかった時代の国民的音楽番組だった紅白も、子供の頃から様々なジャンルの音楽に接してきた世代にとっては、音楽番組というよりは、何を見せたいのかわからない、あるいは、何でも見せる、祭りの見世物小屋のような時代錯誤。一方、音楽にあまり興味はないが、一年に一回くらいは音楽番組を見ようという人にとっては、付いていけない楽曲も多い。

演歌やニューミュージックを順番に並べるような弥縫策は止めて、ジャンルでわけて別構成にして、会場も、司会も、審査員も別にすれば、今よりましになるかもしれない。ただ、そうなると、もう紅白歌合戦とは呼べなくなるが。ところで「紅白歌合戦」という名前自体、かなりアナクロだ。