資本主義の末路が社会主義というパラドックス

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政府は市場に介入して一生懸命に「日経平均株価」を上げようとしている。株価が下がり日本経済が崩壊するという「最悪のシナリオ」を回避するためだ。それはそれで政府の政治判断であり、お任せするしかない。

それでは、株価が下がると、どのような不都合が生じるのだろう。企業のオーナーである株主の損失は増える。それでも、株式を処分しなければ評価損であって実損とはならない。しかし、評価損は金融の世界ばかりでなく実体経済にも影響する重大問題である。ただこの問題も、実体経済が回復すれば自ずと解消される。

株価が暴落すると「誰もが不況がきた」と考えて経済が冷え込む。企業活動は低迷する。採用は落ち込むし、設備や従業員のリストラもはじまる。企業の金融機関からの資金調達も難しくなる。中小企業や時代に取り残された大企業にとっては死活問題だ。ただ、内部留保を溜め込んだ大企業にとっては、大きな問題ではないかもしれない。

株価が下がると、企業が株式市場で資金調達をしようとする場合、調達できる資金が減少する。新規上場を目指す企業にとっても、上場時の株価が下がり調達できる資金は減少する。これは大問題である。しかし、実体経済が落ち込んでいるときに、増資や新規上場を企画する企業はあまりない。

それでは、政府自ら株式を買い上げてまで株価の暴落を防ぐことに、どのようなメリットがあるのだろう。それは、市場から「恐怖」を取り除くということだ。もし政府が平時に市場に介入してこなければ、その効果は絶大だ。しかし、平時から「ゼロ金利、円安、株高」を演出してきた場合には、何をやってもあまり効果は期待できない。

だからと言って政府が、効果が出るまで延々と株式を買い上げていけば、かえって、株式市場の方が破綻する。そこまでいかなくとも、日本の主要企業は、「筆頭株主政府」という国営企業のようになってしまう。どうせ、そこまでいったら、正社員ばかりでなく、フリーランス契約社員も、みんな公務員にしてしまえば、賃金や年金に対する不安も解消できる。この世から失業も不況もなくなり万々歳だ。待てよ、それでは、その昔どこかの社会主義者が唱えていた戯言の世界に逆戻りではないか。

まあ、そのようなことにはならないと思うが、一歩間違えば、「資本主義の末路は社会主義というパラドックス」が顕在化しかねないということを肝に銘じておきたい。