時代に取り残されるな

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昔、私が学生だった頃、「都市銀行」と呼ばれる大銀行が、13行もあった。それらは、世界ランキングでも、上位の銀行だった。その後、経営破綻した北海道拓殖銀行を除く12行は、統合を経て、3メガバンクとなった。

当時、就職面接の時に、「御行の気風に惹かれました」だの、「将来性に惹かれました」などと言っていたのが、馬鹿みたいな話だ。結局、どこに入っても、一緒だった。銀行業に個性なんていらないということだ。企業は「経済合理性」に基づいて「経営判断」を行なうのだから、当然の帰結に過ぎない。

ちなみに、三菱UFJフィナンシャル・グループは、三菱銀行三和銀行東海銀行東京銀行4行の統合。三井住友フィナンシャルグループは、三井銀行住友銀行太陽神戸銀行3行の統合。みずほフィナンシャルグループは、富士銀行、第一勧業銀行に加え、長信銀の日本興業銀行3行の統合。そして、りそなホールディングスは、大和銀行協和銀行埼玉銀行3行の統合だ。

私が就職した鉄鋼業も同じ。私が、日本鋼管に入った当時は、鉄鋼業のリーディングカンパニーは、新日本製鉄日本鋼管住友金属川崎製鉄神戸製鋼の「高炉5社」、そう呼ばれていた。しかし、今は、日本製鉄(新日本製鉄住友金属の統合)、JFE日本鋼管川崎製鉄の統合)、そして神戸製鋼3社となった。

もっとドラスチックなのは、電機メーカー​だろう。多くの企業あるいは部門が、日本企業同士の統合ではなく、M&A外資の傘下に入った。

さらに、付け加えれば、日産自動車西友中外製薬すかいらーくなども外資だ。

若者に言いたい。「日本社会は、想像もつかないスピードで変化している」ということを。だから、時代に取り残されないようにしなければならない。

ここでもう一つ、時代の変化に関わる話をしよう。重厚長大産業全盛期、工学部の中で、金属工学や船舶工学が花形だった。また、文系では、グローバル化前、外国語学部(特に英米語)が、法経商学部より就職に有利だった。しかし、それも今は昔。

いつの間にか、多くの日本企業が、外資の傘下に入った。国内にも、たくさんの外資系企業がある。今や、中途半端な日本企業に入るより、外資系企業に入る方が、よいと思うのは当然だろう。英語を学ぶために、アメリカの大学に留学するのが、当たり前の現在。帰国子女も増え。外国語学部の学生でなくとも、卒業までに英語をマスターしている学生は多い。

その昔、多国籍化を目指す企業では、毎年必ず、東京外国語大学大阪外国語大学などの学生を採用していた。しかし、いつの間にか、外国語大学の枠採用はなくなった。理由は簡単、社内留学制度が整備されたからだ。法学部や経済学部、理工学部を卒業して入社した社員の中から選抜して、アメリカの大学院に留学させたのだ。「留学は一石二鳥」。ビジネススクールロースクール、理系大学院で学び、修士号を取れるうえに、英語もブラッシュアップできる。いつの間にか、海外で活躍する日本人ビジネスマンの多くが、留学経験者となった。

海外人材育成という点で、「アメリカの大学院で学位を取らせる」というのは、効率的だった。留学中に、教授や同級生から、アメリカ社会の様々な情報を得られるばかりか、卒業後も、母校(Alma mater)の名声や同窓生ネットワークを活用できるからだ。

何とも皮肉な話だが、アメリカの大学院に留学するには、外国語大学のBachelor of ArtsBA)の学位では、あまり役に立たない。専門性のない学生と見做されるからだ。ロースクールの場合など、法学部の Bachelor of LawsLL.B.)の学位がなければ、修士課程(LL.M.)に入れない。

ただ、最近では、どの企業もグローバル化したせいで、留学制度に金を使うより、若手社員を、自前の海外事業に突っ込んで、OJTOn-the-Job Training)で英語(外国語)を学ばせるようになった。会社の金を使って、個人に学位を取らせたところで、恩を仇で返すような転職をする連中が多かったからだ。そのためか、今では、企業留学は下火となった。

まあ、ここまで言うと、日本の学歴や語学力では、外資は無理かもしれないと考えるかもしれない。しかし、そんなことはない。金を稼ぐことと学歴は、あまり関係ないからだ。そもそも、大学では、金持ちになる方法など教えてくれない。本当に能力のある学生は、大学で、金儲けの下手くそな教授の講義を受けるより、自らの道を進んだ方がいいと、すぐに分るはずだ。

そうは言うものの、どんな企業でも、あっさり倒産するという現実。そこへ行くと、公務員は安泰。昔、公務員は、給料が安いうえに、交際費も無く、つまらないなどと言われていた。しかし、今の不況の中、コンプライアンスでがんじがらめの民間企業の方が、つまらないかもしれない。

とにかく、時代に取り残されないよう、常に自分を磨き、アンテナを高くして、生きて行こう。辛いかも知れないが、実はどこも同じ。自分の選択を信じて、そこに生きがいを見いだしていけば、幸福は、必ず、後からついてくる。