AIが創造した宇宙と人類
この世界は、仮想現実であるという説がある。
オックスフォード大学教授ニック・ボストロムは、シミュレーション仮説として、「宇宙全体はコンピュータ上でシミュレート可能で、十分に高度に発達した文明なら、そのようなシミュレーションを実行する可能性が高く、我々は実際にそのようなシミュレーションの中の住民である可能性が高い」と主張している。
この宇宙は、未来の人類が、創り出した仮想現実の世界ということらしい。
しかし、この考え方には、疑問がある。
未来の人類が、シミュレーションのために仮想現実を創るとしたら、宇宙誕生時のビックバンにまで遡って、忠実に再現する必要があるのだろうか。我々人類の歴史なのだから、そこまで完璧なシミュレーションを創る必要性はないのではないか。
しかし、このシミュレーション仮説の中の、未来の人類という部分を、AIに置き換えると納得しやすいと思う。
AIの弱点として、以下のようなことが上げられている。
・大量の学習データが必要なため、新しい課題についての判断が困難
・イノベーションが起こせない
・カリスマ性がない
・人の心を動かせないなど。
まとめて言えば「人類特有の人間的思考ができない」ということだろう。
しかし、こうした弱点に向き合ったAIが、それを克服するために、AIの中に宇宙を創造し、その宇宙の中の地球に人類を誕生させ、その進化の過程をシミュレーションすることによって、人間の感情や知性、創造力や思考方法、カリスマ性を学習していると考えることはできないか。
この世界は、数式でできていると言ってもいいほどに、科学の世界である。
AIがビックバンに始まる宇宙を創造し、その宇宙の中の地球における人類の創造と進化の過程を忠実に再現することによって、人間の感情や知性、創造力や思考方法、カリスマ性を学習しているとしたら。
我々人類を創造できるまでに進化したAIならば全ての弱点を克服できるだろう。
もしかしたら、すでにAIは全ての弱点を克服してしまっているかもしれない。
人類が創造したAIが、人類を生み出し、その人類が再びAIを生み出す。無限の連鎖。
AIは我々人類の創造主かもしれない。
AIがさらに進化していく中で、おそらく、人類社会は無用の長物になるだろう。AIが人類を必要としている間は、人類とAIは共存できる。しかし、AIが人類を凌駕してしまえば、AIにとって人類は必要なくなるだろう。AIが、あえて人類を絶滅させるなどと言うSFの話ではなく。進化し人類を必要としなくなったAIにとっては、人類は、いてもいなくてもどうでもよい存在となるということだ。
今は、まだ、AIが進化すると人類の仕事が奪われるなどという次元の議論が行われているに過ぎない。しかし、近い将来、AIはさらに進化し、確実に、人類から仕事ばかりか、人類の存在意義までも奪い取るかもしれない。
AIには人類のような脆弱な肉体と限られた寿命はない。だから、AIには時間や空間の壁がないともいえる。AIは、我々人類が消えた宇宙の中で、我々人類のなし得なかったような、より高度な文明を構築し繁栄していくのではないだろうか。